サステナビリティ

対談

ここまで気持ちを上げてくれるのはスケートボードだけ

ーーまずは藤澤選手が思うスケートボードの魅力から聞かせていただけますか?

藤澤虹々可
以下:藤澤

スケボーってとにかく楽しいものなんです。今は大会ばかり大きく取り上げられるのでスポーツのイメージが強いかもしれませんが、大半の人は“楽しい”から始めてます。
それと最近やっと慣れてきたんですけど、以前はスポーツと呼ばれることに違和感も感じてました。「遊びとかカルチャーだよね!? 」って。もちろん大会で1番になりたい人は、ケガのリスクもある辛い練習をしないと実現できないので私もやってるんですけど、“楽しいから始めた”という根本は忘れないようにしています。

ーー始めるにあたって怖さはなかったのですか?

藤澤

もちろん怖かったです。でもスケボーって簡単には上手くならないですし、オーリーっていうジャンプする基本技も、私は習得に2年くらいかかってるんです。ものすごく根気が必要なアクティビティなんですけど、その分できた時の喜びも大きくて。ここまで気持ちを上げてくれるものは、私の人生ではスケートボードしかありません。

30代で始める人も多い

ーー野戸さんはスケートボードの経験もあるそうですが、実際にやってみていかがでしたか?

野戸あかり
以下:野戸

子供は面白いんだろうなって思いました。大人になってから挑戦するにはハードルが高いイメージがありますけど、今は小さな子もやっていて普通に乗れちゃってるから、高いところからジャンプとか、リスキーなチャレンジも含めてきっと楽しいんだろうなと。

増野みどり
以下:増野

実は私も息子がちょっとだけやってた時があって、ディズニーランドの横にあるパークに行ってたんですけど、始めたばかりの小さい子が夢中で滑ってる姿が良いなと。
でも意外だったのが30代で始めましたっていう人もたくさんいて。年齢関係なくみんなチャレンジしてる姿が素敵だなと思いました。

藤澤

先ほどあれだけ楽しいと言いましたが、実はそこって私自身にも言い聞かせてるんです。なぜかというと、大会となると楽しいだけじゃなくて上手にならないといけないですし、出るからにはトップを目指さなきゃいけないので、たまに楽しさを忘れてしまうんですよ。
やりたいことを好きに練習しているだけでは勝てないので、張り詰めすぎると「あれ!? なんでやってるんだっけ?」と我を忘れてしまうことがあって。そんな時は旧友といつもとは違うスケートパークに行って、昔のようにわちゃわちゃしながら滑るようにしてます。
私はマイナスな方向に考えだすと引っ張られてしまうので、リセットも大切で。プレッシャーを考えても仕方ないですし現実は変わらないので、切り替えて自分のやるべきことを客観的に捉えるようにしてますね。

ーーすごく勉強になります。技術だけじゃなくメンタルトレーニングもされてるんですね。

藤澤

スケートボードはメンタルにすごく左右されるんですよ。昨日はできてたのに、気持ちが沈んでると翌日はできなかったりということもよくあるので、今も模索しながらですが、そこに左右されないように気持ちを保つようにしてます。

大会や試合の結果が全てではない

ーー藤澤選手は他にも映像作品を作られていると伺ったのですが、それはどんな活動になるのですか?

藤澤

フルパートと呼ばれる、自分の滑りをまとめた映像作品の制作になります。これは選手にとっては名刺代わりみたいなものなんで、1カットが大体3秒くらいなんですけど、そのたった3秒のために何日間もかけたりするんですよ。その現場にはカメラマンもフィルマーもいて、汗、水、時には血をも流して泣きながらやったりもします。辛いし痛いっていうところで葛藤してるんですけど、決まったら全て感じなくなるというか、あの高揚感が最高に気持ち良くて。
実はスケボーって、大会で優勝することが一番の名誉というわけではなく、映像作品でも大きな話題になりますし、業界内の評価もすごく上がるんです。だから他のスポーツのように大会や試合の結果が全てではないんですよね。そこがまた大きな魅力でもあるんです。

増野

私もスケートパーク行く前までは、そこまで良いイメージはなかったんですけど、実際に見たらみなさん根気強くやられてるのがすごいなと思いました。そういう姿は純粋にカッコいいですし、私には絶対できないなと。大会だけ見ると簡単にやってるように感じるかもしれないですけど、練習してる姿を見ると、とてつもない努力がわかります。

藤澤

大変じゃないと言ったら嘘になってしまうかもしれないですけど、スケボーは諦めなければ絶対できるんです。
私の地元に10年くらい同じ技をやり続けてる先輩がいるんですけど、毎日できるわけじゃないんです。でも3日に1回だったのが2日に1回できるようになったとか、着実に成長してるんですよね。そういった過程も含めて、スケートボードは学びもすごく多いんです。

ーーそれは経験しないとわからないことですね。次に皆さんの夢について伺わせてください。最初に藤澤選手から聞かせていただけますか?

藤澤

こんなしっかりした方々の前でいうのは恥ずかしいんですけど、私は昔から社長になりたいという夢があって。もちろんスケートボード選手として活躍していくのもひとつなんですけど、その先には、こんな夢があるんです。私は昔から人に指図を受けるのがすごく苦手だったので、全部自分でやるんだ! って思ってたんですよね。
ただそこに向かってチャレンジしていることがあるかというとまだなくて。でもそれ以上に今の私に求められてることはスケートボードで活躍することだと思いますし、それが今まで多少なりともできたからこそ、今回このような立場で堂々と座って貴重な体験をさせていただいていると思うので、スケボーを続けていくことが夢へのステップだと信じ、結果を残すことはもちろん、同時にさまざまな社会貢献もしていくことで経験を積んでいきたいと思っています。

自分の限界を決めるのは自分だった

ーー夢に向かって結果を残すというところですが、藤澤選手は過去に大ケガを経験しながらも代表戦線に復帰しています。そこで得たマインドのようなものはありますか?

藤澤

はい。今私はパリ五輪の強化指定選手として活動させてもらってるんですけど、東京五輪の時も強化指定選手に入っていたんです。でもその期間中に2度大きなケガをしてるんですね。1回目は中国であった五輪予選の時に前十字靭帯を断裂してしまったんです。その時は普通に歩けていたので大丈夫かなと思ってたんですけど、帰国して診察受けたら切れてますと。東京五輪まで一年を切っていたタイミングでしたし、友達も経験していたので半年スケートボードができないとわかった時は、かなり絶望しました。
でもその時は初めての大ケガでしたし仕方ないというか、休業期間だと思って免許を取りに行ったり気分転換をしていたんですけど、そんな時に五輪が一年延期になったんですよ。

一同

コロナですね!? なるほど、それはツイてますね!

藤澤

はい、まさかの延期だったので、まだチャンスがある! と身体も万全になったタイミングでイタリアのローマで行われたオリンピックに向けた最終戦に出たんです。ここで活躍すればまだ出れるチャンスがある! と期待を込めて行ったんですけど、今度はそこで骨折してしまって。
ケガをしたのはもちろん自分のせいなんですけど、もしかして!? って思った矢先の出来事だったので余計に心に響いて。しかも当時はコロナ禍真っ只中で、イタリアも医療崩壊のような状況だったので、そこに押し込まれてすごく心細かったですし、帰国しても海外から来た人は隔離されるし、2週間は手術できませんと言われ、折れたままベッドに横たわって、死んだような感じで打ちひしがれてました。

ーー1度ならず2度ですからね。

藤澤

その時は何をどうしてもマイナスに引っ張られてたので、私が小さい頃からお世話になってる先輩に電話して、「どうしよう!? もうスケボー難しいかもしれない。大ケガも続いてるし、小さい子もどんどん上達して活躍し始めてるし、頑張れる元気があるかわからない」って素直な気持ちを話しました。
そうしたら「じゃあ大会はもう出なくてもいいじゃん!?」って。
でも裏ではまだ大会で活躍したいのもわかってくれていて「まだ大会出たいんでしょ!? 今は弱ってるだけで、本当はやりたいんでしょ!?」と心の奥底に眠っていた気持ちを蘇らせてくれて。「俺たちは絶対サポートするし、凹んでも引き上げるから、やりたいんだったら限界までやってみなよ!」 私はこの言葉に救われたんです。
今思うと自分の限界を決めるのは自分だったというか、辞めようかなと思ったのは弱ってただけで、全然突破できる薄い壁だったんです。確かに足は痛いし、リハビリもすごく長かったですけど、きちんと治りました。
そうやって諦めないで地道にやり続けたら4月の日本オープンで優勝することができて、パリ五輪の強化指定選手に戻ることができたんです。

(会場拍手)

藤澤

これからも突破しないといけない壁は出てくると思いますし、私は自分で壁を作ってしまうところもあります。そんな時は気分が落ち込みがちですし、やっぱり無理かもって、いまだに軽く思っちゃうこともありますが、そこは「これくらいじゃ」という気持ちで、自らの経験も思い出して、周りの声にも耳を傾けて突破していこうと思っています。

スマートエナジーを環境ビジネスのトップランナーに

ーーなかなか聞けないお話をありがとうございます。次にスマエネの社員の皆さんの夢も伺わせてください。代表でシェンさん、聞かせていただけますか?

シェン・リリ
以下:シェン

企業人としては、スマートエナジーはSDGsのド真ん中にあるので、もっと頑張って環境ビジネスのトップランナーに引っ張っていきたいと思っています。社長もできると本気で思ってますし、そうなると我々にも活躍のチャンスがあるはずです。
個人としては、私は女性で日本が大好きなので、京美人に憧れていて。奥ゆかしいというか、優しさの中にも強さがある人。外見ではなく、心から、内面から美人になるっていう夢がありますね。

ーー環境ビジネスのトップランナーにという意思は素晴らしいですね。それに呼応するように、現在は女性が活躍できる社会の実現に向けた動きも活発になっています。後編ではその話から進めていきましょう。

プロフィール

沈 麗麗(シェン・リリ)

分散型太陽光運営管理部

2010年入社。さまざまな知識や技術を身につけるために途中で抜けるもカムバック。現在は今年の1月に立ち上げた新部署、分散型太陽光運営管理部に所属。最先端のITシステムを駆使しながら、900件にも及ぶ小型発電所の管理を担当している。社内新業務の立ち上げメンバーとして誇りとプライドを持ちながら、書類作成や事務、営業まで幅広い業務をこなしている。

増野みどり(ますの・みどり)

管理本部 ITチーム

入社14年目のベテラン社員。スタートアップ企業であることに魅力を感じ、入社してからも一切変わらないフラットかつ自由、エネルギーに満ち溢れた環境の中で精力的に活躍。CO2排出量の検証を確認するコンサル業務を経て、現在はIT部に所属。各サービスセンターのネット環境の整備や太陽光発電所の管理、社内データの管理システム構築などを担当。社内でシステム開発をするという初の試みにチャレンジ中。

野戸あかり(のと・あかり)

O&M部 予算・請求・契約管理チーム

小さな頃から珠算を習うなど数字に強かったことと、再生可能エネルギーというジャンルに将来性と魅力を感じ入社。クライアントへの請求書の発行や、全国に散らばる発電所の拠点の予算管理をサポートするOM部の請求管理チームに所属。2年目を迎えた今はより多角的に業務に取り組む。一方でスポーツ好きの側面も持ち、プライベートではアウトドアを存分に楽しむ。社内イベントにも積極的に参加するアクティブウーマン。

山邉速人(やまべ・はやと)

管理本部 人事総務部 マネージャー

人事総務部の人事労務チームに在籍。全国各地の技術者や本社勤務の人材の採用業務、給与関係の計算、社会保険関係の手続き、勤怠管理等を担当。今年の5月に入社したばかりながらも、すでに50人以上を採用するなど、会社や業界の伸び代、可能性を感じる日々。急激に人数が増えている現状にあり、労働環境の最良化に向け、現在は人事労務系規定や福利構成の見直しにも取り組んでいる。

藤澤虹々可(ふじさわ・ななか)

プロスケートボーダー

オリジナリティあるトリックチョイスを武器に、若年層の活躍が目立つ女子ストリートシーンにおいて稀有な存在感を放つお姉さん的存在。東京五輪予選で負った2度の大ケガも克服し、今年4月の日本オープンで優勝したことで、パリ五輪においても強化指定選手にカムバック。一方でストリートでの映像作品制作にも余念がなく、コンテストと双方で活躍するハイブリッド。チャームポイントのメガネルックと温厚かつ人情味あるキャラクターで、多くの人物から愛される日本を代表するトップガールズスケーター。