インタビュー 大串社長

電験合格者に聞く

2024.7.29(Mon)

スマートエナジー 大串卓矢社長

再エネ活かす電気/資格通じ理解深まる
勉強する過程「一生の財産に」

スマートエナジーは、電気保安の専門職「電気主任技術者」や電気工事士の資格取得を社内で推奨しています。自らも10年前に第3種電気主任技術者試験(電験3種)に合格した大串卓矢社長(55)に、受験までの道のりや資格に向けて勉強する意義を語ってもらいました


震災後 太陽光に参画/再エネ生かす電気学ぶ

-電験を目指したきっかけは何ですか?

大串社長(以下、大串):2011年に東日本大震災が発生し、日本中の原子力発電所が停止しました。太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの導入が社会的な使命として認知され、スマートエナジーも太陽光発電所の運営に関わるようになりました。その中で、太陽光発電所の管理に携わる電験という資格の存在を知りました。化石燃料と違い、太陽光や風力など多くの再生可能エネルギーは電気に姿を変えて世の中に届けられます。再エネと電気は関係が深いです。半年ほどして自分で電験に挑戦してみたくなり、試験勉強を始めました。

-東京大学で農学を専攻した理系出身者。苦労は少なかったのでは?

大串:電気の計算に必要なのは物理です。大学入試では生物と化学を選択しましたし、計算は苦手でした。電験のために高校生向けの物理の本を買って基礎から学びました。受験の1年前から、電験の4科目(理論・電力・機械・法規)に着手しました。電験は試験範囲が広い。機械は間に合わないと思って捨てて、最初の試験で他の3科目に合格しました。翌2014年、機械に科目合格し、4科目がそろいました。

休日の早朝に勉強/過去問を何度も解く

-どんな勉強をしましたか?

大串:週末がメインでした。当時は4人の子供が小学生や幼稚園児と小さかったので、朝の4時ごろから子供たちが起きて動き出す10時、11時ごろまで机に向かいました。これで7~8時間確保できます。それから子供たちの世話をしたり遊んだりしました。試験直前には、出勤前に30分から1時間くらい問題を解いていました。実質1年半くらいの準備期間に、合計で1000時間くらい勉強したはずです。

-公認会計士資格を取得しているので、計算に苦手意識はないと思っていました。

大串:会計士は経済学のほか民法や会社法など計算以外の分野も多いです。就職活動を始めた大学3年生のころに勉強を始めて23、24歳くらいまで必死に頑張りました。全国の受験生が受ける模擬試験で一番になろうとハードルを上げ過ぎて、多い日は1日18時間くらい勉強しました。勉強して模試の順位が上がると、モチベーションになりました。
電気の計算は、回路を見てどう公式を当てはめるのか、法則に慣れるまでが難しい。過去問を解いて分からないときに参考書を見る方法でした。過去問の本は6周か7周しました。

-電気を勉強して変わったことは?

大串:それまで家のコンセントを見ても交流だとか直流だとか考えませんでした。分電盤のつくりとか配線の太さとか、意識していなかったものが目に入るようになりました。もちろん、再生可能エネルギーの発展を目指す会社の一員として、電気を知らなくては業務ができませんから、様々な場面で有意義と感じています。

-電験の勉強は楽しかったのですね。

大串:つらいことも多かったですよ。機械科目には、シーケンスとかモーターとか太陽光に直接関係がない問題も、正直言ってありました。仕事が終わった後は、頭が疲れていて計算問題ができなかったです。そのため、夜10時くらいに寝て朝4時に起きる勉強法にしました。頭がフレッシュなときが計算に向いていました。自分の特性に合った勉強法を探すのも大事だと思います。
会計士を受験した当時、周りは自分と同じような大学生が多く、大学受験と大学での勉強の勢いでぶつかれました。電験は社会人になって働きながら目指す人も多く、勉強はやっぱり大変だと思います。

ルール設定して実行/「一生使える技術に」

-これから電験を目指す人にアドバイスを。

大串:勉強に限らず、筋力トレーニングでも美容でも、自分で「こうする」と決めたマイルールを続けることが大事です。そして結果が出るとモチベーションになり長続きします。電験などの試験は、明確に決まった期限(試験日)に向かって頑張れば良いので、取り組みやすい。ルールを決めて頑張るというのも、やってみると意外に面白いものです。

実は、勉強のモチベーションを保ち続けるのは難しいです。いつも気力を振り絞っていては色々な言い訳に負けてしまいます。よって、自動的に自分が動くように前日に「何時から何時までどの問題を解く」と決めておくことにしました。自分で自分をプログラム化すると、気力を振り絞らなくても勉強できるのではないでしょうか。

電験を中心に話しましたが、電気工事士試験も私たちの業務の実務に近く、電気を理解するための勉強ができます。 自分でルールを決めて努力を続け、目標を達成する-。これは一生使える「自分を操縦する技術」だと思います。例えば、健康生活を身につける、趣味を極める、筋トレを習慣づけるなどに応用できます。電験や電気工事士の受験を、こうした「自分を操縦する技術」を身につける機会ととらえて生かしていただければうれしいです。