回避可能原価の決まる仕組み (分散型新聞 連載記事修正版)
回避可能原価が昨年度の7.76円から10.11円に上昇した。PPS事業者にとっては、再生可能エネルギー電源による事業に大きな影響を与える上昇である。回避可能原価の決定までにどのような議論があり、コストが増加したのか。その影響を考える。
■回避可能原価の決定
固定買取価格制度(FIT)では、全ての電力消費者に再生可能エネルギー賦課金として再エネのコストを負担してもらう。このとき、電力会社は、再エネの電気を調達することによって電力会社が回避可能な費用を計算し、その分のコストは電力会社が自社の電力調達コストとして認識する。国は、この回避可能原価を電力会社毎に全電源の変動費から計算する方法として定めていたが、2014年度の価格は変更が加えられている。近年再エネ賦課金が高騰していることから、この部分に焦点があたっている。
変更は、安定電源用の回避可能原価、不安定な電源用の回避可能原価の二種類を定めたことである。太陽光のように火力発電の運転調整で、系統運用している場合には、火力平均可変費が適用され、水力のように安定電源については全電源の固定費を適用する。このようにハイブリット方式と呼ばれる方法に変更になった。
■回避可能とは
回避可能原価の議論は、「電ガ戦争」と言われたCO2排出原単位の議論を思いおこさせる。電力を消費したときに、電力消費量にCO2排出原単位(t-CO2/kWh)を乗じることで、CO2排出量を計算する。このとき、新たな電源を入れたとき、回避可能なCO2排出量はいくらなのかが問題となった。回避可能原価の議論と同じである。
コジェネなどの電源を新たに稼働させたときに、調整される電源は何か(マージナル電源という)が問われた。この問題は、調整する電源の調整期間を、短期でみるのか、発電所の建設まで視野に入れた長期で考えるかによって異なる。ガス業界は、運転調整の態様をみて、マージナル電源は火力発電が適当であるといい、電力業界は発電所の建設まで含め全ての電源が調整電源であると言った。この問題はコジェネ導入によってCO2が減るか増えるかにつき、大きな影響があるため、長い間大きな論争点となっていた。マージナルとは何かは永遠の議論なのだ。
■原価上昇の影響
このように「回避可能」な電源を特定するのは難しいということが過去の議論からわかっていた。しかし、回避可能原価を算定するためには、この問題に取り組むことが必要である。今回は、再生可能エネルギー導入により「回避可能な電力会社の原価とは?」という問題である。
回避可能原価上昇により、再エネ賦課金が下がることになる。しかし、再エネ賦課金が下がったとしても、電力会社の仕入コストが上昇し、そのコストは電力ユーザーに負荷される。よって、回避可能原価の増減は、電気ユーザーにとって再エネ賦課金と通常の電気代のどちらが増減するだけの違いであり、総額は大きく変わらない。
しかし、回避可能原価が問題となるのは、その高低により有利不利となる電気事業会社が存在するためである。ただでさえ、自由化された電力業界では、厳しい競争が行われている。そのなかで、再生可能エネルギーの比率が高いPPS事業者にとっては影響が大きい。回避可能原価の上昇は、PPSに電気仕入れコストの増加となって経営を圧迫する。
回避可能原価のレベルによって、電力業界に大きな影響がある以上、双方が納得できる理論を構築し、透明性の高いデータで算定を行う責任が政府にはあるようだ。